会員からのお便りです
石原勝年さんは昨年12月14日(現地時間)に開催されたホノルルマラソンに出場し、
マラソン初体験でしたが見事完走されたそうです。そこで貴重な体験を書いていただきました。


「初めてのフルマラソン 」

石原勝年
 
 
 私は昨年12月生まれて初めてフルマラソン(ホノルルマラソン)の大会
に出場しましたが、それを知ったホームページ編集長の田中さんから、
投稿するよう頼まれました。
 今はマラソンブームで高齢者のランナーも多く、私のマラソン大会出場は
珍しくもなんでもないことですし、投稿すれば自慢話になってしまうので、
少し躊躇したのですが、ありがたい提案なので、つたない経験ですが拙文
にしました。
 暇つぶしにでもお読みいただけると幸いです。

 なんで突然フルマラソンに?
 
 健康のためならウオーキングの方がいいし、50代以降、
運動らしい運動は何もしていない私のような71歳の高齢者が
40キロを超える長距離を走れば怪我をするのがオチなの
に、どうしてフルマラソンをやろうと思ったのか、それ
には“深〜いワケ”があるんです。  
 実は私の次女一家が一昨年の夏ハワイに移住し、自宅が
「ホノルルマラソン」のコース沿いにあるため、マラソン
当日に自宅前で給水サービスをしたらそれが大人気で、大変
だったけど楽しかったという話を聞き、ならば私もランナー
の一人として、36キロ地点にあるその家の前に倒れこみ
ながら、孫から給水カップを受け取る図も悪くないなと
思ったのが、一番のワケです(全然“深〜く”ないですね)。
 それと「ホノルルマラソン」は「東京マラソン」のような
制限時間がなく、参加者の中には、景色を楽しみながら
のんびり走っている人が多いということも、私の心を参加
へと動かしました。
 トレーニングと大会10日前の怪我  
 


   私のようなスポーツに無縁の高齢者は、トレーニングをちゃんとやら
  なければ42キロなんて走れっこありませんが、そうかといって、
  あまり練習をやり過ぎると足や腰を痛めるし、そのさじ加減が難しい
  ところで、どんなトレーニングをしていいか分からず、本屋で見つけた
  『週1回のランニングでマラソンは完走できる』(850円+税)を唯一
  の頼りに、週1回のランニングと、週3回の腹筋・背筋トレーニングを、
  昨年1月に始めました。  
   最初は3キロ走るのがやっとでしたが、練習を重ねるに従って次第に
  距離も伸び、途中フクラハギや膝の痛みで停滞を余儀なくされつつも、
  8ヶ月後には20キロを休まず走れるようになりました。
    これでなんとか大会にも出られると、ハワイへの渡航を楽しみにして
  いたところ、大会10日前の日本での最後の練習でフクラハギの痛みが
  再発してしまい、治療・養生の甲斐もなく、大会前日になっても痛みが
  引きません。スタート後の途中棄権もやむを得ないと覚悟を決め、
  次女夫婦とは、棄権した場合の救援策を細かく打ち合わせしました。

大会当日
 
 大会のスタートはホノルル時間で12月14日(日)午前5時
なので、3時に起床し身支度を済ませました。するとどう
いうことでしょう、あれほど心配した足の痛みが消えている
のです。
 当日の出場者は約3万人。華やかな花火を合図に先頭走者
がスタートしましたが、後方に並んだ私がスタート地点を
通過したのは花火の十数分後でした。フクラハギが痛み出し
たら棄権に追い込まれるので、ゆっくりゆっくり走ります。
沿道では、ブラスバンドの演奏や、市民・観光客が拍手で
声援してくれます。  

 当日の天候は雨が降ったり止んだりの生憎のコンディ
ションでしたが、とにかくゆっくりゆっくり走り続けます。
ワイキキを過ぎた住宅地の沿道では、時折住民の人が自宅の
前で大きな声で応援をしてくれます。
「Good job!」。それも盛んに拍手を送りながら笑顔で。
そんな応援を受けると、思わず走るスピードが上がります。
中には手作りのお菓子や飴をカゴに入れて差し出してくれる
方もいます。沿道には、所々に小さな特設ステージも設け
られ、バンドとダンスのパフォーマンスや、フラダンス、
DJなどで走者を元気付けてくれます。なんだかお祭り気分。
 トイレ休憩も挟みながらゆっくり走っているためか、
フクラハギも痛まず進めましたが、さすがに25キロ過ぎた
辺りからはきつくなり、ランナーの中には、足が攣って走れ
なくなり、歩道で休んだりストレッチをしたりしている人も
増えてきます。

 いよいよ36キロ地点の娘の家です。家族みんなの笑顔
に向かって元気よく走り込み、孫から念願の給水を受ける
ことができました。娘の特製おにぎりも食べて元気よく
再スタートし、6キロ先のゴールに駆け込みました。

 
スタート前


 
念願の孫からの給水を受けました
フルマラソンに挑戦して学んだこと
 
ハワイ名物の虹に向かって
 

 人生で初めてのフルマラソンに挑戦して、二つのことを学びました。  
一つは、人間の身体能力は、高齢になっても訓練すれば伸びるということ。
特に、私のように今まで経験したことがないことを新たに始めた時は、
そのことがはっきりわかります。トレーニングで月を追って着実に走行
距離が伸びていきました。  哲学者マルティン・ブーバーに
「創(はじ)めることさえ忘れなければ人は老いない」という言葉があった
のを思い出しました。  

 二つ目は、何事も周囲の助けが成功の鍵を握っているということ。  
今回のフルマラソン出場は誰に頼まれたわけでもなく、また誰のためでも
なく、自分一人のために決めたことですが、家族のみならず、多くの方から
いろいろな応援をいただきました。ヤマハOB会の友人・知人、高校の同級生、
所属NPOの仲間たち、そして地域の知人など大勢の人が、参加を決めた時や、
怪我で棄権の可能性が出てきた時に、励まし・アドヴァイスをしてくれました。
それがいかに私の心を支え・元気付けてくれたことか。もしそういった
応援がなければ、おそらく完走はできなかったでしょう。

 完走を伝えるフェイスブックの私の投稿には、今まででは考えられない
数多くのコメントが寄せられ、そのどれもが、私の完走を我が事のように
喜んでくださり、中にはご自分の勇気に変えた方もいて、こんなに嬉しい
ことはありません。  今まで応援してくださった全ての方に、ここで
改めて感謝します。ありがとうございました。




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