会員からのお便りです
鴨井次郎さんからとても貴重な情報と音源をお寄せいただきました。
明治時代の音も必聴です。お楽しみください



「明治時代の吹奏楽」

鴨井次郎


 
 
  我が家に大変古いレコード盤があった。
家内の祖父が明治の人としては粋な人で、当時リリースされたレコードを多数
収集していた。
その中の一枚に明治39年2月天賞堂から発売された、海軍軍楽隊楽長の瀬戸口藤吉
が作曲・指揮をし、海軍軍楽隊の演奏による「軍艦行進曲」がある。
このSPレコード盤は80回転で厚さは3ミリ程あり、現在のオーディオ機器では聴く
ことができない。
1973年(昭和48年)友人の秋山紀夫氏〈ソニー吹奏楽団の音楽監督(当時)〉が、
このレコードに興味を持ち、ソニーレコードより『明治の吹奏楽〜まぼろしのSP
復刻盤〜』と題し、LP盤に変換してリリースされた。
このレコードに収録されている曲はA面とB面で計16曲あり、演奏は陸軍戸山学校
軍楽隊・海軍軍楽隊・陸軍第四師団軍楽隊・米国コロンビアバンド等が演奏して
いる。  

 
収録曲
 side=A

1、行進曲「旅順口の進軍」
2、箏曲「六段の上」
3、箏曲「六段の下」
4、長唄「ひなずる三番曳廻る日は」
5、行進曲「愛国行進曲(君が代行進曲)」
6、端唄「御所車」
7、端唄「紀伊の国」
8、俗曲「かっぽれ」  
 
side=B

1、行進曲「若しも月が輝くならば」  
2、軍艦行進曲
3、長唄「越後獅子」
4、長唄「越後獅子」
5、メリー・ワー・マーチ
6、旅順要塞占領
7、行進曲「愛国行進」
8、行進曲「愛国行進」
 
         
         しかし、現在はLP盤も殆ど再生することが出来なくなり、このことを長谷川芳彦氏(東日本ヤマハ
         OB会会員)に相談したところ、このLP盤をCDに変換してくれた。
         さて、軍艦行進曲はB面の2曲目に収録されており、とても興味深い演奏を聴くことができる。
         楽器による演奏では譜例1の様に演奏している。
         2コーラス目から合唱をしているが、なんと彼らは現在の長音階・短音階の音感はなく、5音階
         (ペンタトニック・スケール)で歌っているのが面白い。
      譜例1
  
      譜例2
 
※譜例1と2を比べると、2小節目の1拍目の裏の8分音符のB♭音がC音になっている。  
    所謂、彼らはヨナ抜き節と言われる、4度(ファ)と7度(シ)が抜けた5音階で歌っている。


@明治の吹奏楽の音源です。A東海林太郎が歌っている軍艦行進曲を参考例として、明治の軍艦マーチと聴き比べてください
文字をクリックしてください
            
 @明治時代の軍艦マーチを聴く A東海林太郎の軍艦マーチを聴く 
 



【音階について】
音階とは1オクターブの間をある秩序によって配列した音例のことです
     1長音階 
    
    2短音階 
   
(1)自然短音階
 
    (2)和声的短音階 
 
    (3)旋律的短音階 
 
  3 5音音階(ペンタトニック・スケール) 
   
     1オクターブの間に5音しかなく、ファとシが抜けている。 この音階は日本の民謡や俗楽、
     又スコットランド民謡に使われている。 嘗(かつ)ての文部省歌にスコットランド民謡が多く
     含まれていたのは、日本人に親しみ易いメロディだったからだと思う。   



会員の広場に戻る